プロツアー・ホノルルにようこそ! Hawaii Convention Centerから、Bill Stark、Rich Hagon、Tim Willoughby、Tom LaPille、それにCraig Gibsonが耳よりニュースをお届けします。
by Tim Willoughby
![]() |
| ラウンドの開始を待つラストチャンス予選参加者たち |
プロツアーのラストチャンス予選というものは、ほとんどの場合、プロツアーに参加したいという夢を見ている人たちで一杯です。彼らはごく近くに住んでいたり、交通費がほとんどかからなかったりするのが普通でした。
ハワイでは、交通費が安くない人も参加しています。ハワイは旅行先としても魅力的で、ラストチャンスで負けたとしても浜辺で休暇を楽しむという選択肢があることからか普段よりも多くのプレイヤーが参加していました。
結局、スタンダードのラストチャンス予選の狭き門を4人が通過しました。彼らのデッキリストに共通している部分を見てみましょう。
Gabriel Carlton-Barnes
| |||
Robert Gildec
| |||
Brett Blackman
| |||
James Bishop
| |||
はぁ、エルフだらけですね。つまり、スタンダード環境の正解はまだ見つかっていないということでしょう。続唱スワンの週、フェアリーの週を経て、黒白トークンが最強とは言えず、ホノルルの最後の枠を埋めたのはエルフだったということになります。この幸運な4人はこの後の週末、ブロック構築のデッキで戦うことになりますが、この種のデッキはこの後のプロツアー・オースティン予選で無視できない勢力になるでしょう。最近のグランプリで斉藤友晴と中村修平がこのタイプのデッキを使っていましたが、ようやく結果がついてきたということになります。
by Tom LaPille
このプロツアーに臨むにあたって、私たちが持っているアラーラ・ブロック構築に関する情報はマジック・オンラインのチャンピオンシップ・シリーズからのものだけで、その大会では上位陣はみなよく似たジャンドのデッキを使っていました。ここから、このフォーマットは果たして健全と言えるのかどうかという疑念がわき起こりました。ジャンドだけが生き残るのではないかという不安です。ラウンド1の間にテーブルを見て回ったところ、世界最高のプレイヤーたちはジャンド一色という答えを返してはいませんでした。進化は大量に存在したのです。何人かのプレイヤーのおもしろい着眼点を簡単に紹介しましょう。
斉藤友晴は白緑の攻撃系デッキをこの週末に持ち込みました。多くのプレイヤーの攻撃は《否定の壁/Wall of Denial》で止められてしまうでしょうが、斉藤のデッキはそうではありません。《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》の助けを借りて《貴族の教主/Noble Hierarch》を並べ、7/7になった《茨異種/Thornling》の突撃を《否定の壁/Wall of Denial》と《芽吹くトリナクス/Sprouting Thrinax》総出で防がせ、両方とも破壊、さらには対戦相手にまでダメージを与えるという構成です。《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》で墓地にある《ビヒモスの大鎚/Behemoth Sledge》を使えば、《茨異種/Thornling》の突撃はさらに強烈になるでしょう。
|
|
Gabriel Nassifのマッチでは、彼は《覇者シャルム/Sharuum the Hegemon》と《ガラス塵の大男/Glassdust Hulk》を並べていました。対戦相手のアンタップ状態の土地が1枚になると、Gabrielはここぞとばかりにその腕を振るいます。《覇者シャルム/Sharuum the Hegemon》をもう1体プレイし、《覇者シャルム/Sharuum the Hegemon》の場に出たときの能力を使って無限ループに突入。そして、超巨大でブロックされなくなっている《ガラス塵の大男/Glassdust Hulk》が突撃するのです。彼がカードを片付けているときに、《原始物の粉/Protomatter Powder》と《スフィンクスの召喚士/Sphinx Summoner》がちらりと見えました。今週末、これらのカードを使って、《覇者シャルム/Sharuum the Hegemon》のコンボを何度も何度も決めることでしょう。
|
|
Brian Kiblerの写真をTwitterで配信しましたが、彼のデッキ選択は服装の選択と同じぐらいに常識にとらわれないものでした。このラウンドに彼を見かけたとき、彼は《霧脈の境界石/Mistvein Borderpost》と《原霧の境界石/Fieldmist Borderpost》の束を《飛行機械の鋳造所/Thopter Foundry》で飛行機械に組み替え、《エスパーの嵐刃/Esper Stormblade》とともに飛行部隊を組んで突撃させるところでした。彼の《エーテル宣誓会の法学者/Ethersworn Canonist》はブロック・クリーチャーがいたので残っていましたが、相手の続唱呪文を防ぐ役には立っていました。
|
|
コンピューターの前に戻る間に、第3ターンに両方が《貴族の教主/Noble Hierarch》、《芽吹くトリナクス/Sprouting Thrinax》、《セドラクシスの死霊/Sedraxis Specter》を出しているという盤面に遭遇しました。これらはほんの一例に過ぎないのは言うまでもありません。さらに注目しましょう!
by Tim Willoughby
![]() |
ラウンド2のあるとき、会場には3人のプロツアー殿堂者がいました。この状況で、Jon FinkelがJelger Wiegersmaと対戦しているというのに野次馬せずにはいられません。Wiegersmaはいかにも島という感じで日焼けし、短パンとTシャツ、しかも裸足というくつろぎっぷりでした。
Finkelは島の生活が好きだと認めましたが、このホノルルに引き寄せられたのはその場所以上にマジックのカードによってです。
この偉大なるプロ2人によるマッチはFinkelのマナ事故で尻つぼみに終わりましたが、注目すべき点は境界石サイクルがこのフォーマットでどう働くかでした。Wiegersmaは《霞の悪鬼/Glaze Fiend》の類を入れた非常に攻撃的なエスパー・デッキを使っていましたが、ここで境界石が大きな役割を果たしました。飛行クリーチャーを強化し、《エーテリウムの達人/Master of Etherium》を強化し、最後には《飛行機械の鋳造所/Thopter Foundry》のエサになって最後の一押しを導くのです。
|
|
それに対して、Finkelの攻撃的ジャンド・デッキは境界石を《ジャンドの斬刃/Jund Hackblade》で第2ターンに攻撃するための準備として使います。しかし、境界石をインベイジョンのタップイン土地と同類に考えるのは危険です。この高速の対戦における第2ゲームで、Finkelは手札に境界石と《野蛮な地/Savage Lands》がある状態で始めましたが、マナが足りなくなってしまいました。戻せる基本土地がなかったために彼の賭けは失敗に終わり、大量の境界石に支えられた《エーテリウムの達人/Master of Etherium》に蹴散らされてしまいました。
|
|
境界石はまた、相手の《風変わりな果樹園/Exotic Orchard》が強化されないようにするために使われることもあります。土地を出さなければ、《風変わりな果樹園/Exotic Orchard》はマナを出せないことになるのです。
最後に、この境界石サイクルについて重要な点は、《大渦の脈動/Maelstrom Pulse》との相性です。この呪文を初めて見たときに土地を狙えないことを残念がった人はいたでしょう。複数のパーマネントを狙えなければコストが高すぎる呪文ですが、《名誉回復/Vindicate》はプレイヤーを貪欲にしました。ブロック構築では、その貪欲さが実を結ぶときです。《大渦の脈動/Maelstrom Pulse》で複数の境界石を打ち抜くことができますし、色マナが重要なこの環境では切り札になってくれるでしょう。
by Tim Willoughby
![]() |
《若き群れのドラゴン/Broodmate Dragon》が空を制するこの環境で、ドラゴンと言えば名前の挙がるBrian Kiblerの復活はいかにも時流に乗ったものでした。ホノルルという場所に惹かれたとは言いますが、Kiblerはプロツアー予選を《陰謀団の取調官/Cabal Interrogator》入りのデッキで駆け抜けました。そしてここに至り、Brianは完全に新しいスタイルを手にしています。トレードマークだった花柄のシャツとヘッドホンは、今のBrianにはふさわしくありません。
スーツ姿でベルリンを、というキャンペーンがありましたが、Brianはプロツアーにスーツ姿で現れた一番新しいプロです。水着姿ではなく、KiblerはKiblerらしく、彼自身のやりかたで。
「友達とロデオドライブに行ったときにベルニーニに入ってさ、このスーツを見つけたんだよね。んで、実用上も欲しかったんだけど、それ以上にこれを着てプロツアーに行きたいなと思ったのさ」
白のスーツを手にして、靴、ベスト、ベルトにも投資したBrianは、プロツアーのためにブロック構築に時間を注ぎました。Ben Rubinとともに、メタゲームの中心になるであろう《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》デッキを蹴散らせる「a hot little brew」を編み出したのです。
Jelger Wiegersmaが靴を脱ぎ捨てるほど暑い中で、Kiblerは温度を気にする様子もなくスーツをビシッと着込んでいました。自分なりの快適さの中に居続けること、それがKiblerの勝ちパターンなのです。
by Bill Stark
Gerard Fabianoはプロツアーでももっとも愛すべきキャラクターの1人です。グランプリ王者であり、ニュージャージーではプレイヤーの尊敬を集めているプレイヤーであり、そして参加者の多い東海岸のプロツアー予選をくぐり抜けてここに上り詰めた人物であり、そして、最高レベルの競技においてはちょっとした道化師としても知られています。友達と馬鹿なことをするのが好きな彼は、そのプレイスキルに加え、おどけっぷりやふざけっぷりでも知られているのです。
プロツアー・ホノルルは2つの世界の最高の物になるでしょう。その1つめはすばらしい技量を持ったプレイヤーがプロツアーのステージで競い合う普段通りの世界、そしてもう一つはすばらしき南国の楽園の世界。イベントに向けて、Fabiano氏は「プロツアーで競い合う」よりも「南国の楽園」のほうに注目しているようです。
「プレイしたいデッキリストはあるよ。でも、カード持ってきてないんだ。誰か持ってる人はいると思うんだけどね……」 トレードマークになっている恥ずかしそうな笑みでそうつぶやきました。彼の栄誉のために付け加えるなら、彼はプロツアーに参加するために仕事を終わらせなければならなかったので、デッキをそろえる時間が取れなかったのです。
Michelle Coveを見てみましょう。プロツアーやグランプリをサーキットしている人は、彼女をGamingEtc.comの首脳として認識しているかもしれません。彼女は高レベルのプレミアイベントに出店しているディーラーの一人で、カードやその他マジック関連の品々を販売しています。Gerardのようなプレイヤーにとっては救いの女神です。Michelleは「Gerardは木曜に来て、『デッキない?』って聞いてきましたよ」と言います。問題は、Fabianoがデッキを買いたいのではなく、デッキを借りたいのだということでした。
![]() |
| Michelle Cove、Gerard Fabiano、と、Gerard Fabianoのボードショーツ |
Gerardにとって幸福だったのは、Michelleがプロツアーの記念品コレクターであったことです。彼女がプロツアー巡りをしている動機の一つとして、プレイヤーだけが手に出来る記念品を求めるというものがありました。この週末参加したプレイヤーには、プロツアー公式のボードショーツ(あるレポーターによると、ひどく日焼けしたプレイヤーやジャッジのためにプロツアー公式アロエが必要だったかも、という話ですが)があり、Gerardが状況を説明している時にもそのボードショーツを履いていました。「俺がPTQに参加してた子供の頃から俺のこと知ってますよね」という顔をして訴えるFabianoに、Michelleは答えて曰く「いいわ。デッキは貸してあげる。でもお代にそのボードショーツをもらうわよ」。
大舞台で戦うにあたって、ゲームをするために何でもするというプレイヤーもいます。プロツアー・ホノルルのGerard fabianoに至っては、パンツを献上までして戦わなければならなかったのです!
by Rich Hagon
![]() |
ドラマ「マジック」の第5話が終わり、396の勇敢な魂は、太平洋のどこかにある、魔法の呪文が飛び交い物語のクリーチャーが闊歩する、そしてたった1つの魂しか生き残ることの出来ない島に集っていた。
まず最初に脇役に転じさせられたのは、Michael BiancoとEric Schallerだった。彼らの出番は第1ラウンドで終わり、さらに2ラウンドが過ぎるとグランプリを制したことのあるTim Landaleも沈んでいった。第4ラウンドで中村が姿を消した、と聞いて驚いた観客がいたが、それは最優秀プレイヤーにしてトップ争いにかろうじて指をかけていた中村修平ではなく、中村 肇のほうだった。ここで姿を消したのは他に5人、中にはグランプリのトップ8に入賞すること5回、プロツアーのトップ8に入賞すること3回を数える日本の池田剛の名前もあった。
最初のブロック構築の部分が終わって、イスラエルのNiv ShmuelyとアメリカのBen Wienburgはドラフトの謎を解き明かすことなく沈んでいく。この時点で、この島の奇妙な仕組みによって2日目への進出に関する計算の枠外にいるプレイヤーたちがいた。一勝も挙げないまま参加を続けているプレイヤーが8人。そのほかにも、Cedric Phillips、グランプリ・バルセロナの勝者Joel Calafell、ブラジルのPaulo Vitor Damo da Rosa、インビテーショナル勝者のTiago Chan、世界選手権準優勝者Jamie Parkeといった錚々たる面々もこの時点で一勝しかしておらず、2日目への参加はもはやあり得なくなっていた。
199位には長いキャリアを誇るBram Snepvangers、同じく6点の320位にはメキシコのDaniel Hernandez、様々なビッグネームも、プロツアーで生き残るために血みどろの戦いを繰り広げなければならなくなっていた。2日目に残るために必要な点数は15点、ドラフトポッドの8人のうち全勝したプレイヤーだけが2日目に駒を進めることが出来るように仕組まれていたのだ。
3-2ラインには100人以上のプレイヤーがひしめいていた。その中には、最近のマジック界でひときわ輝く男、最優秀プレイヤー・レースで重要な役目を務めるであろうLuis Scott-Vargasの姿があった。同じラインには何人ものトップ8経験者、プロツアー優勝経験者、あるいは殿堂者までもが顔を連ねる。
一敗しかしていない4-1は気楽なもので、0-3でさえなければ2日目にも舞台に上がることが出来る。日本人では、中村修平、斉藤友晴、八十岡翔太の最優秀プレイヤーとその経験者がここにいた。並んで、中野圭貴、三田村和弥、大塚高太郎もこのラインだ。もちろん手練れ揃いである。アメリカ人では、プロツアー・ジュネーブ優勝者のMike Hron、Paul Cheon、それにマジック・オンラインで名をはせた"FFreak"ことBrad Nelsonがここにいる。
世界中からスターが集まってきているので、誰を応援するかは国次第といったところか。カナダならカナダ王者のDan Lanthier、スウェーデンからはTezzeratorのKenny Obergが生き残っている。ロシア代表はNicolay Potovin、知名度で劣るもののDenis AndrejchikobやAlexander Privalovもいる。フランスからはRaphael Lavyがいつも通り快調に飛ばしている。
しかし精鋭中の精鋭というにふさわしいのは、全く手の付けられない連中だろう。この時点ですべてを牽引しているのは12の勇敢な魂。ホームチーム6人を率いるのは、マン・イン・ブラックならぬマン・イン・ホワイト。墜ちたるCedric Phillipsに代わってBrian Kiblerだ。そしてEric Deluca、Matt "Cheeks" Hansen、Jeff Pyka、Jim Davis、Zac Hillが名を連ねる。インドネシアを無視できなくしているのはTaufik Indrakesuma、スコットランドに旗を掲げるBrit Dougie Penmanもいる。スウェーデンからはChristoph Huber、前新人王のsebastian Thalerはドイツから頂点を目指す。その中でも異彩を放つのが全勝を保つ日本からの刺客、藤田修と2006年度世界王者三原槙仁だ。
この12人のうち何人が日曜に残れるのだろうか? この12人でさえ、土曜に残ることしか確定してはいないのだ。入り組んだ複数形式のために二転三転するこの物語の行方は、マジックのホームページ magicthegathering.com で公開していく。誰が大会を引っ張っていくのか、予想外の所から飛び出してくるのは誰か。時計の針が0を指したときに何が起こるのか――。
![]() |
すべての質問、すべての答え、すべての結末はそこに。
by Tim Willoughby
このトーナメントの環境はジャンドだろうという話題になっていましたが、いろいろなプレイヤーが《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》に頼らないデッキを構築してきました。トップ卓あたりをうろついてみると、バント賛美系のいろいろなデッキが予想以上の結果を残しています。
その一端に来るのが緑白アグロ賛美デッキです。他のデッキよりもマナがシンプルで、興味深い選択が行われています。《ビヒモスの大鎚/Behemoth Sledge》は打撃を通すために入っているわかりやすいカードで、《ヴァレロンの異国者/Valeron Outlander》はジャンドの除去に対してプロテクションを持っているのが強みです。《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》による続唱が蔓延している中、緑白は《ロウクスの瞑黙者/Rhox Meditant》を入れて速攻持ちエルフに対処できるようにするとともにわずかながらもカード・アドバンテージを確保しようという魂胆です。そして、このデッキの決め手になるのは《茨異種/Thornling》。マナが少しなりともあれば、これを除去するには《流刑への道/Path to Exile》が必要になります。持っていなければゲームが続く限り盤面に影響を与え続けることになるでしょう。――そう長い時間ではないでしょうが。
|
|
もう一方で取り上げるべきは4色バントです。ここハワイに参戦しているイギリス人のプレイヤーはこのデッキを使っています。プロツアー京都でトップ8に入賞したMatteo Orsini-Jonesは「クリーチャーと強化呪文の塊」と評します。その評価は、彼が他のデッキで敗れ去ったことの慰めにはなっていません。バントに赤を加えたことで、《長毛のソクター/Woolly Thoctar》や《途方もない力/Colossal Might》が入り、猛威をふるうことになります。《途方もない力/Colossal Might》と《数多のラフィーク/Rafiq of the Many》が組み合わさればまさに無敵、他のデッキがキーカードをプレイできるようになるはるか手前で、ゲームを終わらせることも可能になるのです。
|
|
ドラフト・ラウンドに入ってからは、多くのプレイヤーがこの戦略を使って上位を狙っていくようです。このバント戦法で日曜まで駆け抜けることができるのでしょうか。続きをご期待下さい。
by Tom LaPille
![]() |
| プロツアー・ホノルル2009ヘッドジャッジ Toby Elliot |
プロツアーのヘッドジャッジは、大会をスムーズに進めることの責任を持ちます。今週末、プロツアー・ホノルル2009のヘッドジャッジは、Toby Elliottです。Tobyは、トーナメントがスムーズに進んでいることに非常に満足しています。396人の参加者を集めたプロツアーにおいて、デッキ登録ミスがわずか2件しかなかったことは一陣の涼風です。サイドボードが14枚だったプレイヤーが1人、メルカディアン・マスクスの《崩れゆく聖域/Crumbling Sanctuary》を4枚登録してしまっていたプレイヤーが1人いました。頭の中で《崩れゆく死滅都市/Crumbling Necropolis》と《秘儀の聖域/Arcane Sanctum》が混じってしまったのでしょう。デッキ登録の罰則は、出すジャッジにしても受けるプレイヤーにしても悲劇的な物です。400枚近いデッキリストの中でわずか2枚しかミスがなかったのは、誰にとっても喜ばしいことだったと言えます。
ブロック構築は枚数が少ないので、難しいカードや相互作用もそうはないものです。実際、今日、ルール以外でジャッジが呼ばれたのは次の2つがほとんどでした。1つめは、続唱で唱えられるカードをめくった後にさらにカードをめくってしまったというもの。もう一つは、クリーチャーが《天界の粛清/Celestial Purge》を受けた時に《流刑への道/Path to Exile》と間違えてライブラリーから基本土地を探してしまったというものでした。どちらも単純なミスなので、修正するのは簡単です。
ルールに関する質問でおもしろかったのは、《エーテル宣誓会の法学者/Ethersworn Canonist》がらみの質問でした。エスパーのプレイヤーが《エーテル宣誓会の法学者/Ethersworn Canonist》を出している状態で、もう一枚《エーテル宣誓会の法学者/Ethersworn Canonist》をプレイしました。対戦相手は1体目の《エーテル宣誓会の法学者/Ethersworn Canonist》を《終止/Terminate》で除去し、そのターンの後半でさらに《終止/Terminate》を使って2体目を除去しようとしました。――これは不正なプレイです。《エーテル宣誓会の法学者/Ethersworn Canonist》は、アーティファクトでない呪文がそのターンにプレイされていたかどうかだけを見るのであって、その《エーテル宣誓会の法学者/Ethersworn Canonist》が以前の呪文をプレイされた時点で場にあったかどうかは関係ないのです。
Tobyは、もっとおもしろいルールの質問が来ないかということ、そしてトーナメントが無事に進行するかということに興奮しています。なんと言っても、興奮のあまりに奇妙なダンスを踊っていたぐらいですから。ジャッジがトーナメントの間にフロアで踊っていたら、そのトーナメントはうまくいっているということを意味するんですよ!
by Bill Stark
![]() |
| Chris Lachmann(右)とJacob Van Lunen プロツアー・サンディエゴ2005終了後の勇姿 |
太平洋に浮かぶ南国の楽園ホノルルは、他の国々から数千マイル離れたところにあり、訪れる人の期待に応え、あるいはそれ以上のものを提供してくれる希有な土地です。プロツアーでのトップレベルのプレイと併せて、プロツアー・ホノルルは疑う余地もなく期待を最高にふくらませてくれたプロツアーと言えるでしょう。言い換えると、旧交を温め、新しい友人を作り、そして再びプロツアーの栄光の舞台に戻っていくのです。カバレージ・チームは、何らかの理由によってマジックの世界から離れざるを得なくなっていたプロツアー王者で、プロツアー予選を抜けてハワイに現れたプレイヤーにスポットライトをあてることにしました。
Chris Lachmann、「Silver Kids」コンビの片割れとして名高い彼は、2年前のプロツアー・サンディエゴの王者でした。「プロツアーを離れたくはなかったけど、仕事だったんだ。今でもプレイしたいよ」そう正直に語ってくれた彼は、このハワイに向けてプロツアー予選を勝ち抜きました。
もう一人、カリフォルニア・クラブのBilly Moreno(プロツアー・ロサンゼルス2005の準優勝者)も、機会があればプロツアーに戻りたいと思っていた人物でした。彼曰く「プロツアーの魅力。プロツアーには参加したいし、そこでの経験は最高だよ。ホントに興奮したし、どきどきしたしね。プロツアー予選を抜ける原動力になった。抜けたらすぐに(ホノルルに向けて)ドラフトの練習を始めたよ」とのこと。
![]() |
| プロツアー・ヴェニス2003の覇者 Osyp Lebedowicz |
前回のプロツアー・ヴェニスの王者、Osyp Lebedowiczもまたホノルルに向けて地元のプロツアー予選を抜けたプレイヤーです。「文字通り家の隣で、プロツアー予選があったんだ。参加して、勝ったよ。ハワイ行きだったんだけど、ホントはオースティンがよかったな」東海岸のプレイヤーはいつもの調子で振舞い、《崩れゆく死滅都市/Crumbling Necropolis》と間違えて《崩れゆく聖域/Crumbling Sanctuary》と書いてしまって【ゲームの敗北】を受けることになりました。彼は友人や周りの人に「この週末、《崩れゆく聖域/Crumbling Sanctuary》でプレイしろって言われたよ」と冗談を言います。やがて、ホールの中ではどうやって《崩れゆく聖域/Crumbling Sanctuary》に対処するかという話題が盛り上がりました。Osypと彼の悪癖がプロツアーに戻ってきたのです。
そして最後の一人はすでにカバレージにも登場している全勝男、白服ことBrian Kiblerです。ドラゴンマスターは前のプロツアー・シーズンのプロツアー・ハリウッドの間に再び闘志を燃やし始めました。「プロツアー・ハリウッドに(元プロ・プレイヤーの)Ben SeckやPatrick Sullivanと行って、ラストチャンス予選で4-2だったんだ。翌日の予選でも4-2。腕が落ちてると思ったよ」
今回のイベント、そして今後のイベントで、Brianやその他懐かしいプロ・プレイヤーたちとまた出会いたいものですね!
by Tim Willoughby
何ヶ月も前、Zvi Mowshowitzは、あらゆるドラフトには「法則」があると言いました。「法則」、つまりそのプレイヤーの勝率をその形式において最大限に高める、すべての状況を均一に扱える共通の戦略です。しばしば、その法則は単純でわかりやすいものです。たとえば「青を取れ」とか「緑を取るな」とか。今の環境は色は複雑化、戦略は多様化しており、今までのように単純に切って捨てられるようなものではなくなっています。冒険心から、私はプロツアー・ホノルルのフロアに降り立ち、未来のドラフトに生かせるような戦略を探そうと試みることにしました。
最初に注目したのは、最優秀プレイヤー・レースを快調に飛ばすLuis-Scott Vargasでした。最初のピックは《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》、これでグリクシスに決めてあとは手なりでピックした感じです。……ちょっと法則にはなりそうもないですね。
「普段はエスパーか白緑アグロに組むんだよ。エスパーはいろいろなトリックが仕込めるから、平凡に組んだデッキでもよく回ってくれる。そうじゃなかったら、コントロール・デッキに組み上げるのも悪くない。アグロともコントロールともつかない中途半端が一番よくないね」
エスパーの話は気になりますね。「平凡に組んだデッキでも回る」というのですから、私のドラフト技術でも何とかなるかもしれません。次は全勝のZac Hillに聞いてみましょう。
Zacはアグロに寄せるのが好きで、中でも青白が好みのようでしたが、決めうちには懐疑的でした。
「この環境にはいろんなデッキがある、いいカードもあれば悪いカードもある。決めうちは危険だよ。うまくいかないときもあるから、それより柔軟に対応する方がいいだろうさ。個人的には攻撃的なほうが好きだけど、Patrick Chapinは5色ドラフトがお好みだしね」
そのChapinが5色を選んだ理由は興味深い物でした。アラーラ再誕には山ほど強力な呪文が入っているので、その中でも最強のカードを引けば強いに決まっているというのです。
中村修平は、その5色ドラフトには穴があるのではないかと示唆します。個人的な好みはエスパーだと言い、前のラウンド5色デッキに負けているとはいえ、彼はここで5色ドラフトに切り替えることは無様に過ぎると感じたのでしょう。
「5色デッキには爆弾も入っていますしマナも充分出せます。両方ともすばらしいんですが、両方を手にするには幸運も必要ですから」
勝っているプレイヤーを見れば見るほど、このフォーマットにおいては、アグロが正解のようにも見え、金色の魔力が大量に存在することに惹かれ、2色デッキに3色目を散らしたのが正解にも思えます。ビートダウンでは、青白や緑白が正解っぽいのですが……それを一度にひっくり返すような爆弾が存在するのもまた事実です。決めうちが出来るような世界ではなくて、個人の力量にかかってくるということでしょう。
ドラフト・クラブの法則。それは、「法則は存在しない」ということでした。
by Tom LaPille
プロツアー・ホノルルに向けての予選シーズンはエクステンデッド形式でしたが、今年行われたレガシー形式のグランプリ・シカゴのトップ16に入賞したプレイヤーもこのホノルルへの参加資格を手にしています。レガシー形式のグランプリがあることで、エターナル系のプレイヤーにも光を浴びる機会が与えられるわけです。そして、普段ならプロツアーへの招待なんて考えてもみないプレイヤーをこの週末のプロツアーへと導いたのです。
![]() |
そんなプレイヤーの中に、Andy ProbascoとRich Shayがいました。彼らはアメリカのエターナル系コミュニティの中ではよく知られた存在です。Andyはグランプリ・シカゴの決勝で、直前のプロツアーに優勝した赤い帽子のGabriel Nassifに敗れたものの、準優勝の成績を収めました。Andyが参加したことのあるプロツアーというと、2006年のプロツアー・チャールストンにさかのぼります。成績は、彼自身の言葉を借りれば「最悪」でした。Richはシカゴで16位ギリギリの成績でしたが、プロツアー経験はAndyよりも勝り、プロツアー・コロンバス2004と「いつだったかのプロツアー」でマネーフィニッシュを遂げており、プロツアー・ロサンゼルス2005にも参加しています。彼らのレガシーの能力でプロツアーにたどり着いたのですが、彼らはヴィンテージでも優秀なプレイヤーです。毎年行われるヴィンテージ選手権では、彼らはそれぞれ準優勝の成績を収めたことがあります。(Andyは2005年、Richは2007年)
今日は、2人ともRichの組んだゾンビ・スケルトン・デッキで参戦です。調整の初期に、Richはプロツアーに参加できなかったプレイヤーを相手にアラーラ・ブロック構築で対戦してみました。そのプレイヤーが《カターリの残影/Kathari Remnant》をプレイし、続唱で出てきたのが《死の男爵/Death Baron》。再生と飛行、それに接死のついた1/2クリーチャーはRichの攻撃をぴたりと止めました。Richはそれを踏まえてデッキを構築し、いい成績を収められたのですが、それを信じたのはAndyだけでした。ゾンビ・スケルトン・デッキを駆るのはRichとAndyの2人だけ、そして彼らは2人とも構築を3-2で切り抜けたのです。
|
|
このデッキについて、Richは「見た目より強いよ!」と言います。Andyはまじめな顔で「見た目だと《死の男爵/Death Baron》より弱いのなんているものか」と答えました。Andyはこのデッキを調整してはいませんが、サイドボードの数枚以外はこの構築が気に入っていることは特記しておくべきでしょう。
Rich Shay and Andy Probasco's Zombie Skeletons
| |||
それぞれのプレイヤーは、このイベントに向けて細かな修正を加えました。Richは、今回の複合形式を考えてリミテッドの練習をつみました。今まで構築のプロツアーにしか参加したことがなく、高レベルのリミテッドといえば国別選手権程度しか経験がないのです。Andyのほうは、最新のカードを知ることが最大の調整でした。まだ新しい環境だったのが幸いして、覚えなければならない知識はそれほど多くありませんでしたが、そもそもこの環境に存在するカード自体をあまり知らなかったのです。
6回戦終了後に彼らに話したところ、彼らはどちらもドラフトの第1ラウンドを落としており、生き残るためには残り2マッチに勝たなければならない状態になっていました。Andyは自分のデッキに満足しており、1マッチ目に負けたのは自分のミスのせいだと言います。注意さえしていれば負けることはないと。一方のRichは不安げでした。1本目の相手が殿堂者のJelger Wiegersmaで、彼のポッドには他にOsyp LebedowiczとOlivie Ruelがいるというのです。
RichもAndyも、ハワイですばらしい時間を過ごしている、トーナメントの環境はここに来ようと思った理由の大きな一つだと言います、彼らはこのトーナメントにあわせて休暇を取り、ハワイを満喫するつもりなのです。Richはプロツアーそのものについてまだまだ語り足りなそうでしたが、その中でも最高の経験として昨日のルーアウ・プレイヤー・パーティを挙げました。
「食べ物も曲も最高で、まわりにいる連中もみんなマジック好きだなんてもう堪えられないね」
RichとAndyは多くのプレイヤーとは違う道を通ってこのプロツアーに現れましたが、彼らの経験も最高の物です。プロツアーはあらゆるマジック・プレイヤーに何かを与えてくれます。もじ参加する機会があれば、あなたも参加してみて下さい。楽しめることは保証しますよ!
by Tim Willoughby
ドラフトでは時としておかしなことがおこります。プロツアー・ホノルル初日のトップ卓では、《思考の大出血/Thought Hemorrhage》が3枚出ました。構築では神ですが、リミテッドでは紙です。部屋の別の場所では、もっとおもしろいことが起こっていました。
プレイエリアを横切り、Martin Juzaが調子良さげにやっているところを見に行きました。彼は《金線の天使/Filigree Angel》を出していて、アーティファクトがたっぷり出ていてライフも充分になっていました。彼の対戦相手のCalosso Fuentesは《威圧の王笏/Scepter of Dominance》と、かなりの数のクリーチャーを並べていたので、Juzaは《軍部政変/Martial Coup》をプレイします。
|
|
その直後、状況は急転直下にねじれます。《ガラス塵の大男/Glassdust Hulk》を数枚出して、Juzaはさらに《金線の天使/Filigree Angel》を出したのです。Fuentesは混乱しているようでした。彼もまた《金線の天使/Filigree Angel》を持っていたのです。それをプレイしてゲームは決まるはずでした。ライフを15点得たばかりか、《威圧の王笏/Scepter of Dominance》で相手の巨大フライヤーは攻撃もブロックもできない状態になっているのですから。
|
|
それから、Juzaは彼の持つ最強のコモン2体で攻撃し続けます。次々と出てくるアーティファクトのおかげで彼の《ガラス塵の大男/Glassdust Hulk》はブロックされない状態になっていました。最終ターン、Fuentesは《破片撒きのスフィンクス/Sharding Sphinx》を引きましたが、もはや大勢は決していました。レアは優秀だったのですが、Juzaの幕の内的なオールスターには勝てなかったのです。
by Rich Hagon
![]() |
| すでに墜ちたる者たちよ…… |
この島に到着した選手は396人。そして、アラーラの断片・コンフラックス・アラーラ再誕によるドラフト3ラウンドとブロック構築5ラウンドからなる第2章まで生き残ったのは143人だった。253人は栄光の舞台を離れ、現実世界へとたたき出されたのだ。さて、それでは第2章はどのような展開が待ち受けているだろうか。
集団の先頭に立っているのはアメリカ出身マレーシア在住のZac Hill、マン・イン・ホワイトBrian Kiblerの2人だ。Hillはブロック構築ではChristophe Gregoirを倒して難なく通過、さらにドラフトでは日本の両巨頭三原槙仁と藤田修が立ちはだかる中を超アグロ緑白で全勝してのけていた。一方のKiblerはリミテッドで、Christoph Huber、Sebastian Thalerの欧州組と、同国人のMatt Hansenを打ち破っての登場だ。
Hansen、Thaler、三田村和弥、Rasms Sibastは1敗ライン、ここには国の威信を賭けて戦う会場唯一のインドネシア人Taufik Indrakesumaも名を連ねて合計11人だ。
6-2には、40人のプレイヤーがひしめき合い、日曜日に生き残れる可能性を信じている。藤田修、三原槙仁、大塚高太郎、彌永淳也といった強豪日本勢がいるのがこのエリアだ。ヨーロッパ勢では、殿堂者Raphael Levy、超ベテランのRobert van Medevoort、オーストリアのHelmut Summersberger、チェコのMartin Juza、ビーチハウスのベルギー人Jan Doiseがいる。
ホームチームにも有名選手が目白押しだ。Brad Nelsonはオンラインでの成功をそのまま紙のマジックの勝利につないでいるし、Paul Rietzlは世界最高ランキングのプレイヤーの1人だ。David Irvineはここ数年プロツアーの常連で、Osyp Lebedowiczはプロツアー優勝経験者だ。そして「負け知らずの」Luis Scott-Vargasもこのラインにいる。
次は、もはやミスの許されないグループ。第2章進出最低点の5勝を辛うじて果たしたのが、Paul Cheon、斉藤友晴、"The Tezzerator"ことKenny Oberg、プロツアー・京都王者Gabriel Nassif、プロツアー・ジュネーブ王者Mike Hron、前最優秀プレイヤー八十岡翔太、サンディエゴの優勝者Chris Lachmann、"The Innovator"ことPatrick Chapin、殿堂者Jelger Wiegersma、世界王者のAntti Malin、その他60人以上が日曜日への生き残りを賭けた熾烈な戦いに挑むのだ。
「負け知らずの男」
"The Hat"
"The Innovator"
「マン・イン・ホワイト」
初出場選手
誰が生き残るのか?
世界王者、世界最強チーム、個人戦プロツアー王者、グランプリ王者、殿堂者、インビテーショナル優勝者……さまざまな登場人物が明日に向けて戦う、他にはあり得ない世界――それが、プロツアーの2日目なのだ!
by Tim Willoughby
![]() |
| プロツアー参加者、土曜日のドラフトの様子 |
プロツアー・ホノルルのトップ卓を見ていると、この大会に参加しているプロ・プレイヤーには一定の傾向があることに気がつきました。構築戦を何度もこなしているからか、あるいは単純に偶然のいたずらか、ドラフト・デッキが自分のブロック構築のデッキと似たスタイルになっているプレイヤーが多いようなのです。
Luis Scott-Vargasは第1ドラフトの最初のピックは《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》でした。この時点で、この強力なフィニッシャーを生かさない手はないでしょう。7マナソーサリーを使い続けてきた経験から、ドラフトの終了時にはLuisは《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》がその日の勝利に導いてくれると誇らしげに宣言していました。
一方、Brian Kiblerは《エスパーの嵐刃/Esper Stormblade》とその仲間たちのおかげで初日全勝で勝ち抜きました。2日目のドラフトでは、Kiblerは違う断片をピックしていましたが、根本的な戦略は同じでした。小型の飛行クリーチャーで素早く削りきるというものです。エスパーでなかったためか勝率はふるいませんでしたが、世界最強のプレイヤー相手に全勝を守るなんてことは夢物語というものですね。
最後にZac HillとPatrick Chapinを見て見ましょう。彼らは構築ではPatrickの5色コントロールを使っています。土曜日のドラフトではそれと同じような戦略に出ました。Zacは《天球儀/Armillary Sphere》を2枚入れてマナを安定化させ、《呪文縛りのドラゴン/Spellbound Dragon》と2枚の《困惑の石/Cumber Stone》で戦うという戦法、Patrickは《融合の精霊/Fusion Elemental》2枚と《崇敬の壁/Wall of Reverence》という奇をてらった方法です。3マッチを通して、Patrickは《崇敬の壁/Wall of Reverence》の力で200点以上のライフを得、トップ8レースから脱落せずに構築へと戻ってきたのです。アラーラ・ブロックの正解は5色なのかと聞いたら、彼は笑いました。
「俺はあまり賢くないから、勝つためには5色全部必要なんだ。それだけだよ」
by Bill Stark
![]() |
| マッチとマッチの間にマジック・オンラインのトーナメントを観戦する 最優秀プレイヤーの最有力候補Luis Scott-Vargas |
2009年プロツアー・シーズンも折り返し地点を迎えたことで、私たちカバレージ・チームは現時点の最優秀プレイヤー並びに新人賞の行方をまとめてみたいと思います。この週末を迎えた時点で、最優秀プレイヤー・レースのトップグループは中村修平、斉藤友晴、Luis Scott-Vargas、Gabriel Nassifの4人。彼らはすべてこのホノルルの2日目に駒を進めています。
プロツアーのスイス・ラウンドのドラフトが終わった現時点の状況を見てみましょう。最優秀プレイヤー・レースのトップを走るLuisはスイス・ラウンド24点の22位。そのすぐ後ろを追うNassifは同点で、タイブレイカーによって28位です。一方の中村修平と斉藤友晴は彼らに3点負けていて、それぞれ58位と66位です。このままプロツアーが終わったとしたら、この4人の最優秀プレイヤー・レースにおける順位は全く同じままになることになります!
新人王のほうも盛り上がっています。先週のグランプリ・シアトルでトップ8に入ったAri Laxはそのポイントを手に首位に迫ります。Brian Robinsonと山本明聖の2人が同点でトップを走っており、彼ら3人はともにこのホノルルに参加しています。しかし残念ながらAriは勢いを生かせず、初日落ちとなってしまいました。生き残っている2人は、第2ドラフト終了時点でともに21点。Brianは53位、山本明聖は59位につけています。
最優秀プレイヤー・レースや新人王レースは、プロツアーやグランプリにさらなる興奮をもたらしてくれる要素です。2009年、新人王は誰で、最優秀プレイヤーに輝くのは誰なのか。今シーズン後半に行われるローマでの世界選手権をお楽しみに!
by Rich Hagon
![]() |
Tom Rossを知っていますか? 彼はこの島で急浮上してきたリーダーです。彼とトップを競い合っているのは、三田村和弥(今回と同じブロック構築で行われたプロツアー・横浜で準優勝)と野中健太郎の日本人2人です。三田村は、今朝のドラフトで《ジャンドの魔除け/Jund Charm》を序盤続けざまに流したにもかかわらず、ジャンドで勝ち抜きました。3人はそれぞれドラフト全勝で、初日の構築で1敗しただけの状態で構築に戻ってきたのです。
![]() |
| 野中健太郎、Tom Ross、三田村和弥 彼らは(トップ8でも行われる)ドラフトで全勝、合計でも1敗しかしていない。 |
これに続く9-2には9人のプレイヤーが名を連ねます。昨夜の時点でトップだったBrian KiblerとZac Hill、彼らは無敗の戦場であるブロック構築に戻ってきたのです。そしてアメリカ人ではMatt Hansen、Brad Nelson、Conley Woods、Paul Rietzl、Donald Kastnerがここに、ヨーロッパからはおなじみChristophe GregoirとRasmus Sibast。それを25点で追うのがTaylor WebbとイギリスのMark Glenisterの2人です。
8-3になると、複数のイベントで名を挙げたプレイヤーも含む25人以上がひしめく激戦区です。Raphael Levy、三原槙仁、Gaudenis Vidugiris、Kenny Oberg、Patrick Chapin、Jan Doise、Helmut summersberger、それにMartin Juzaが高く評価するチェコの新鋭Lucas Blohonもいます。
この3敗ラインには最優秀プレイヤーの座を競う2人のプレイヤーも並んでいました。Luis Scott-Vargasはトップを独走することができずにおり、京都で見せた無敵っぷりは影を潜めています。とはいえ彼も8-3、ドラフトでは5-1の成績を残しています。Gabriel Nassifのほうはブロック構築で2-3とふるいませんでしたが、ドラフトでは6-0と全勝で駆け抜けました。しかし、彼を待ち受けているのは60枚の世界、トップ8に入るには敗北をすべて返上する戦果が必要です。
プロツアーにおいて、崖っぷちの問題はつねに同じです。何回負けたら大会に残れなくなるのか。3敗ラインより上に43人のプレイヤーがいる状態で構築ラウンドに戻ってきました。総合成績で4敗なら大丈夫? 3敗1分? それとも、3敗でギリギリ? 日曜日に残り、伝説に残る戦場でドラフトに参加できるのはいったい誰になるのでしょうか?
by Rich Hagon
平均的なプロツアーには最強の400人が参加し、グランプリでは場合によっては4桁にも上るプレイヤーが運と技術を競い合います。そんな中で、すべての話をする時間は普通はないものです。すべての話どころか、ほとんどの話を拾うことも出来ません。正直に言えば、プロツアー王者や殿堂者その他の有名人が順位表のどこにいるかということを伝えるだけで手一杯です。今日は、その他のニュースをお伝えする機会を手に入れました。ほとんど知られていないある男、それどころか綴りを書くことも誰もできないであろう男にスポットライトをあてたいと思います。その男とは、タイから来たこの男です。
![]() |
この男 Veerapat Sirilertvorakul の名前は9音節、そう、ブラジルの Paulo Vitor Damo da Rosaと並んで長い名前です。ですが、彼らの名前を間違えることはないでしょう。あり得るとしたら、Veerapat Pinyovitayawong、こちらも同じくタイからのプレイヤーで、実際に間違えた人も少なくないのではないでしょうか。まあ、それは今回の本題ではありません。
なぜこのSirilertvorakul氏に注目したのかですが、彼は世界最高ランキングの持ち主だというわけでもなければ、世界最大の《炎血の襲撃者/Igneous Pouncer》のコレクターでもありません、多分。英語で言った一言が私の顔を真っ赤に染めたからでもありません、それは言語障壁の問題です。今日このV.S.氏を取り上げるのは、彼が一勝もしなくても彼はすでに勝者であるからです。
説明致しましょう。
ご存じの通り、マジックをプレイして世界を見るためには、常に最上の中の最上である必要はありません。Veerapatはプロツアーで一勝もしないかもしれません。その上、彼はプロツアーに参戦できない可能性も充分にありました。しかし、彼はしばしばもう一日休日を取ることに成功しています。たとえば以下のような実績があります。
最初のプロツアーは2002年。彼はバンコク郊外50キロにある自宅からフランスのニースに、たった18411キロの移動を経て参加。238位で、2日目に残ることは出来ませんでした。その年、彼はタイ選手権王者としてシドニーの世界選手権に挑み、タイは20位になりました。彼自身はちょうど200位でしたが、彼の移動距離には26104キロが加算されました。
2年後、彼は再び、今度はタイ選手権4位の肩書きで世界選手権の戦場に戻ってきました。今度の開催地はサンフランシスコです。結果は211位で、ゴールデン・ゲート・ブリッジを観光して、距離には25460キロの往復が加算されます。2007年のグランプリ・バンコクで26位に入賞してから、V.S.は数年雌伏の時を過ごしていました。彼が次に世界の舞台に舞い戻ってきたのは昨年、もちろん世界でもっとも魅力的な場所の一つハリウッドにて開かれたプロツアーで37位に入賞した時でした。移動距離は26554キロです。
2008年、彼はタイ選手権で準決勝に進みましたが、残念ながら世界選手権でメンフィスに行くことはできませんでした。今、彼はホノルルにいて、21179キロの彼方で2日目に残っています。
私たちはカバレージ・チームとして可能な限り多くの瞬間を捉えてお送りしているのですが、マジックをすばらしいものにしているのは、会場のどこかで毎ラウンド起こっている、各個人が自分の歴史を刻むことだということはわかっています。
それは巨大な誤りかもしれません。それは5回目のマリガンかもしれません。それは痛烈なトップデッキかもしれませんし、それは生まれて初めてプロ・プレイヤーを倒したことかもしれません。Veerapatの場合はどうでしょう。私たちは彼が《抵抗の微光/Gleam of Resistance》を唱えてロシアのNicolay Potovinを倒そうとしている瞬間の写真を撮ることに成功しました。文章を書いている間に、笑顔のタイ人はトップ50入りの道を確保していました。これで、次の世界を飛び回る大冒険はプロツアー・オースティンが目的地になりました。
もしあなたが、自分にScott-VargasやNaswsif、中村修平、斉藤友晴といったプロたちを打ち倒せるだけの実力がないと思っていても、あるいは実際になくても、いいのです。プロツアーは高級クラブですが、Veerapat Sirilertvoraklが証明したとおり、招待名簿の中にあなたの名前が入ることもあり得るのです。挑戦してみましょう!
by Tom LaPille
16回戦の長きにわたった戦いも、すでに第14回戦。2日目に行われるアラーラ・ブロック構築5回戦のうちちょうど3回戦目です。明日トップ8によって行われる決勝ラウンドはアラーラ・ブロックのドラフトですが、第1卓から第5卓のプレイヤー、つまりトップ8に入りそうなプレイヤーがどんな構築デッキを使っているのかを見て見ることにしましょう。
Table 1: 三田村和弥 (ナヤ-ジャンド・コントロール) vs. Paul Reitzl (エスパー・アグロ)
Table 2: Brian Kibler (エスパー・アグロ) vs. Christophe Gregoir (ジャンド・コントロール)
Table 3: Tom Ross (ナヤ・アグロ) vs. Jan Doise (エスパー・コントロール)
Table 4: Donald Kastner (5色コントロール) vs. Lucas Blohon (5色コントロール)
Table 5: Zac Hill (5色コントロール) vs. 野中健太郎 (ジャンド・コントロール)
上位10人のうち3人が5色コントロールを使っています。Donald KastnerとZac Hillのデッキは、このラウンド13番卓でプレイしているPatrick Chapinとの協力によるものです。Blohonのデッキは独自の構築による物です。彼らは皆、大量のマナ源を入れ、あらゆる色から選んだこのフォーマットに存在する最高の呪文を唱えることができるようにして、《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》でゲームを終わらせるという構成になっています。
![]() |
KiblerとReitzlはエスパー・アグロで挑みました。《エスパーの嵐刃/Esper Stormblade》、《エスパーゾア/Esperzoa》といった攻撃的クリーチャーを使い、素早く相手を攻撃していくというものです。《潮の虚ろの漕ぎ手/Tidehollow Sculler》で相手の強カードを抜いたり、《エーテル宣誓会の法学者/Ethersworn Canonist》で続唱呪文を止めるのも忘れていません。
|
|
Christophe Gregoirと野中健太郎が選んだのはジャンド・コントロール。先週末のマジック・オンライン・チャンピオンシップを制したデッキとよく似た構成です。《瀝青破/Bituminous Blast》、《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》、《若き群れのドラゴン/Broodmate Dragon》などを使ってカード・アドバンテージを得る一方で、《終止/Terminate》や《大渦の脈動/Maelstrom Pulse》、《朽ちゆくヒル/Putrid Leech》、《芽吹くトリナクス/Sprouting Thrinax》で相手を引っかき回します。
|
|
三田村和弥のナヤ-ジャンド・コントロールは上のジャンド・コントロールとよく似ていますが、マナを少し広げて《徴兵されたワーム/Enlisted Wurm》を投入しています。
Jan Doiseのエスパー・コントールはこれまでカバレージに取り上げられていませんが、独特の構成をしています。《苦悶のねじれ/Agony Warp》と《ヴィダルケンの異国者/Vedalken Outlander》を使って序盤を支え、《鋼の風のスフィンクス/Sphinx of the Steel Wind》と《軍部政変/Martial Coup》で一気にゲームを決めるのです。また、彼のデッキには、エクステンデッドのプロツアーでしか見かけなかったカード、《求道者テゼレット/Tezzeret the Seeker》が入っています。
|
|
Tom Rossのナヤ・アグロ・デッキは、あえて《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》を抜きました。カード・アドバンテージを確保するために代わりに入っているのが《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》で、《野生のナカティル/Wild Nacatl》を出してくるのです。またこのデッキには《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》4、《復讐のアジャニ/Ajani Vengeant》2、《サルカン・ヴォル/Sarkhan Vol》1と大量のプレインズウォーカーが入っています。
|
|
第14回戦が終わり、Ross、三田村、Gregoir、Reitzlはトップ8を確定させました。残り4人の運命はいかに!
by Tom LaPille
![]() |
| プロツアー初参加のJonathan Loucksは、アメリカ北西部のマジック界ではよく知られた存在です。 |
昨日、私はプロツアー初参加のJonathan Loucksにインタビューをしました。Jonathanはアメリカ北西部で、誰も使ったことのないようなデッキを使うことを恐れないプレイヤーとして名声を高めています。また、シアトルで参加したプロツアー予選でも、そのような類のデッキを使っていました。《砂の殉教者/Martyr of Sands》+《再誕の宣言/Proclamation of Rebirth》デッキを使っていましたが、メタゲームの変遷によってこの決定を考え直さなければならなくなりました。彼の友人は、ストームでも墓地系でもないコンボデッキを見せてくれと言います。Jonの結論は、《やっかい児/Pestermite》と《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker》を使った5色デッキで、無限のクリーチャーを出して《目覚ましヒバリ/Reveillark》から《けちな贈り物/Gifts Ungiven》をコンボの足しにします。回しているうちに色は5色から3色に絞り込まれました。彼はこのデッキが気に入ったので、このデッキを使うことにしました。その選択が功を奏して、彼は生涯初のプロツアーに参加する権利を得たのです。
この週末、Jonathanが使っていたのはアグロよりのジャンド・デッキでした。彼は、マジック・オンライン・チャンピオンシップで結果を残したデッキは、テーマのない、ただの強いカードの束のようだと言います。彼の作ったものにも多くの強いカードを使っていますが、それらのカードは有機的に絡みつき、ただ積まれているだけではないのだと。このデッキについて、Jonathanは「俺は、俺のより劣るデッキには勝つだろうし、俺のより勝るデッキには負けるだろう」と言います。彼はこれが最強のデッキであるとは思っていませんが、このデッキの残した3-2という結果と、ドラフトでの2-1という結果から、彼は2日目に進出することができたのです。
Jonathan Loucks's Jund Aggro
| |||
彼の今週末の経験について語るとき、ジョナサンは晴れやかな様子でした。彼はその空気を愛していました。質の高いセット、制服に身を包んだジャッジたち、グランプリではお目にかかれないようなきらびやかなフィーチャー・マッチ・エリア。彼はPaul Cheon、Zac Hill、Brian David-Marshall、その他諸々出会ったことのない人たちを含む、世界中のマジック・プレイヤーやライターと交流することに興奮していました。「Jon Finkelが歩いてるんだぜ!?」
プロツアー予選を勝ったことによって手に入った、ハワイへのタダの旅行というのもJonathanには魅力的でした。不幸なことに、彼の大学の期末試験と被っていたために到着は木曜日の午後になり、月曜には出発しなければなりませんでした。期末試験をプロツアーの前に回すことも可能でしたが、「この日に試験するしかなかったんだよ!」
Jonathanはプロツアーに霧中になり、またマジック最大の大会に参加したいと思っています。読者の皆さんの中に、彼と一緒にプロツアー・オースティンに来る人がいることを楽しみにしています!
by Bill Stark
プロツアーの最終ラウンドが終わり、パブリック・イベントエリアで行われているプロツアー・オースティン予選が話題の中心になりました。プロツアーでの予選が厳しいのは誰もが知っていることです。プロツアーの2日目に残れなかったプロプレイヤーたちがこぞって参加するのですから、厳しいに決まっています。この予選は通常通り行われましたが、スタンダード環境の多様性を物語るかのようにトップ8に残ったプレイヤーはみな違うアーキタイプのデッキを使っていました。そのプレイヤーとデッキはこちらです。
Jonathan Hom - 白緑トークン
中村肇 - 白単キスキン
村松大輔 - 3色ドラン
Philip Yam - 赤黒アグロ
Ben Wienburg - エスパーラーク
Charles Lau - 黒白トークン
Alec Nezin - 続唱スワン
Ervan Maisauewe - フェアリー
これからのプロツアー・オースティン予選シーズンに向けて、このすばらしき多様性はどうですか! トップ8のデッキリストは、まもなくmagicthegathering.com のDecks of the Weekで紹介されます!